私は現在、大学で1コマだけ授業を担当している非常勤講師です。常勤の研究者や会社員のように安定した収入はなく、ほぼ無収入に近い状態です。そのため、毎月の生活費を少しでも補えるよう、分配型投資信託の割合を徐々に増やしていこうと考えています。
私のようなケースは珍しいかもしれませんが、最近は物価上昇や年金不安から、分配金が得られる投資信託が人気を集めています。その中でも注目されているのが、楽天証券とSBI証券が扱う「楽天SCHD」や「SBI・SCHD」といった商品です。これらは、米国の有名ETF「SCHD(シュワブ米国配当株式ETF)」に連動しており、年3.68%(税引前)の分配金利回りを目指しています。ユーチューブでも解説動画が次々と公開され、一時期はちょっとしたブームになっていました。
ただ正直に言えば、私は「たった年3.68%の分配金しか出ないのに、なぜここまで人気なのか?」と感じています。結論から言うと、私は楽天SCHDやSBI・SCHDを購入するつもりはありません。以下ではその理由を説明していきます。
楽天SCHD・SBI・SCHDとは?
どちらのファンドも、米国の優良配当株に投資する商品で、構成銘柄にはコカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ペプシコなどが含まれています。
ファンド名 | 信託報酬 | 決算回数 | 取り扱い証券 |
楽天SCHD | 年0.1238% | 年4回(2・5・8・11月) | 楽天証券限定 |
SBI・SCHD | 年0.1227% | 年4回(3・6・9・12月) | SBI証券ほか複数 |
購入時には「再投資型」と「受取型」を選べます。
- 配当受取型:配当をそのまま受け取り生活費などに充てる
- 配当再投資型:配当を再投資し、複利効果で資産を増やす
自身の投資スタイルに合わせて選べる点は魅力ですが、それだけで選んでよい商品かどうかは別問題です。
「配当」は魅力だけど、過信は禁物
例えば100万円を投資した場合、3.68%なら年間36,800円の分配金が期待できます。しかし実際には、課税口座では米国税10%+日本税20.315%が差し引かれるため、手取りは約29,300円となり、利回りは2.93%に低下します。
新NISAで非課税にした場合でも、年間36,800円、つまり月3,000円程度の配当です。これだけで生活が劇的に楽になるわけではなく、「配当生活」という言葉が与えるイメージとはかなりギャップがあります。
また、よく「SCHDは毎年増配しているから将来的には配当が大きくなる」と言われますが、たとえ増配率が10%だったとしても、翌年の配当が単純に10%増えるだけです。仮に3万円だった配当が3万3千円になる程度で、生活レベルが変わるような大幅増収にはつながりません。もちろん複利効果を長期にわたって積み上げれば差は出ますが、元本が小さいうちは「劇的な変化」とは程遠いのが現実です。
資産形成目的には向かない?
資産形成を主目的とするのであれば、私はSCHDはあまりおすすめしません。一般的に、長期投資で資産を増やすにはオルカン(全世界株式、年率約6.5%)やS&P500(年率約9.5%)の方が適しているとされています。私自身も、メインはFANG+などのハイテク株投資信託です。
誰が購入するべきか?
もちろん、数千万円規模の資産を持つ方が、安定した配当収入を得るために一部をSCHDに投じるのは合理的だと思います。ただし、米国株式市場全体が下落すればSCHDも同じく下落します。
高配当株だからといって、値下がり幅が小さいわけではなく、回復が早いとも限りません。事実、トランプ関税ショックの際も、回復はハイテク株のほうが圧倒的に早く、FANG+はすでに最高値を更新していますが、SCHDの回復は比較的ゆるやかです。
そもそも私自身は、SCHDを「高配当」とは思っていません。
結論:SCHDは高配当ではない
楽天SCHDやSBI・SCHDは、配当収入を重視する層には人気ですが、私はポートフォリオに組み込むつもりはありません。実際には、もっと高配当が期待できる商品も存在します。
例えば、「WCM世界成長株厳選ファンド(予想分配金提示型)(ネクスト・ジェネレーション)」や「フィデリティ・米国株式D(分配重視・H無)」などです。これらについては、別の記事で詳しく解説する予定です。
【免責事項】
本文中の意見はあくまで私個人の投資方針や考えに基づくものであり、異なる考え方を否定するものではありません。
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