はじめに
楽天証券、SBI証券、野村證券、マネックス証券などの日本のネット証券会社で、不正アクセスによる被害が急増しています。金融庁は、サイバー攻撃による損失が数百億円に達すると警告しています。攻撃者は顧客のアカウントを乗っ取り、株式を勝手に売却し、流動性の低い外国株(特に中国や香港の銘柄)を購入する手口で、投資家に大きな損失を押し付けています。証券会社は補償を行わない方針のため、個人投資家は自ら対策を講じる必要があります。
この記事では、不正アクセスの手口、被害の規模、資産を守るための具体的な対策を解説します。また、中国関与の憶測についても、証拠に基づき慎重に検討します。あなたの資産を守るために、今すぐ行動しましょう。
不正アクセスの手口
攻撃の仕組み
攻撃者は以下のような手口でネット証券を標的にしています:
- フィッシング詐欺:楽天証券やSBI証券を装った偽メールやウェブサイトで、ログインIDやパスワードを盗みます。例:「口座確認のお願い」というメールのリンクから偽サイトに誘導されるケース。
- アカウント乗っ取り:盗んだ認証情報でログインし、以下の行動を取ります:
- 顧客の株式や投資信託を無断で売却。
- 売却資金で流動性の低い中国株や香港株を購入。
- 購入銘柄が暴落し、顧客に損失を押し付ける。
- システムの弱点:楽天の「エコシステム」(証券、銀行、ECの統合アカウント)やSBIの複数サービス連携は、1つの認証情報漏洩が全サービスに波及するリスクを高めます。
被害の規模
金融庁によると、2025年2月から4月までの約3カ月で、ネット証券全体で1,454件の不正取引が発生。被害総額は、売却された株式で約506億円、買い付けられた株式で約448億円です(以下の表は金融庁のホームページから引用)。個々の被害額は数十万円から200万円超で、Xでは「全財産の半分が消えた」「補償がないのは納得できない」といった声が上がっています。

証券会社は「内部からの情報漏洩はない」と主張しますが、被害者の中には「フィッシングに引っかかっていない」と証言する人も。マルウェアや高度な攻撃の可能性も指摘されており、攻撃の全貌は不明です。
補償の課題
楽天証券、SBI証券、野村證券、マネックス証券は、不正取引の損失を補償しない方針です。金融庁も、顧客のセキュリティ管理に過失(例:弱いパスワード、2FA未設定)がある場合、補償は難しいとしています。投資家自身での対策が不可欠です。
資産を守る5つの対策
以下の対策を今すぐ実行して、資産を守りましょう。金融庁や証券会社の推奨に基づく具体的な手順です。
1. 二段階認証(2FA)を設定する
2FAは、IDとパスワードに加えてワンタイムパスワードやメール認証を要求する仕組みで、不正ログインを防ぎます。
設定手順:
- 楽天証券:マイメニュー → お客様情報の設定・変更 → セキュリティ設定 → ログイン追加認証 → メール認証またはワンタイムパスワードを選択。
- SBI証券:お客様情報設定 → セキュリティ設定 → 2段階認証設定 → 認証方式を選択。
- マネックス証券:ログイン後、設定・登録 → セキュリティ → 2段階認証設定。
2. 強力なパスワードを設定する
弱いパスワードは攻撃の入り口です。以下のルールを守りましょう:
- 12文字以上で、英数字・記号を組み合わせる(例:Tr@de2025!Jp)。
- 他のサービス(例:楽天市場、SBIネットバンク)と使い回さない。
- パスワードマネージャー(例:LastPass、1Password)で管理。
- 3~6カ月ごとに更新。
3. フィッシング詐欺に注意する
フィッシングは主要な手口です。以下の点に気をつけてください:
- メールの送信元を確認:楽天証券は@rakuten-sec.co.jp、SBI証券は@sbisec.co.jpから送信。不審なメールは開かず削除。
- 公式サイトに直接アクセス:ブックマークや手入力でwww.rakuten-sec.co.jp、www.sbisec.co.jpへ。検索エンジンの広告リンクは避ける。
- ログイン通知をチェック:身に覚えのないログイン通知が届いたら、すぐにパスワードを変更し、証券会社に連絡。
4. 取引履歴を毎日確認する
早期発見が被害を抑えます。以下の習慣を:
- 毎日ログインし、取引履歴と残高を確認。
- 異常があれば即連絡。
- 証券会社のアプリでプッシュ通知を設定し、取引をリアルタイム監視。
5. デバイスを保護する
PCやスマホのセキュリティを強化:
- 最新のセキュリティソフト(例:Norton、ESET)を導入。
- OS(Windows、iOS)とブラウザ(Chrome、Safari)を最新に保つ。
- 公共Wi-Fi使用時はVPNを利用。
連絡先一覧:
証券会社 | 連絡先 |
楽天証券 | 0120-600-600 |
SBI証券 | 0120-104-214 |
マネックス証券 | 0120-430-283 |
野村證券 | 0120-103-951 |
中国関与の憶測:事実と慎重な考察
一部で、不正アクセスが中国による組織的な攻撃、特に「超限戦」(非軍事的手段で他国を弱体化させる戦略)に関連するとの憶測が広がっています。ただし、現時点で国家関与の証拠はなく、慎重な検証が必要です。
憶測の背景
- 中国株の購入:攻撃者が流動性の低い中国株や香港株を購入する手口は、価格操作(ポンプ・アンド・ダンプ)に似ており、市場の信頼を揺さぶる可能性がある。楽天証券は一部銘柄の取引を停止。
- 攻撃の規模:3カ月で1,454件、約950億円の被害は、単独のハッカーでは困難で、組織的な攻撃を想起させる。
- 日中関係:経済安全保障や領土問題を背景に、金融市場を標的にする動機が推測される。
慎重な視点
- 証拠の欠如:金融庁や証券会社は攻撃元を特定しておらず、中国関与の証拠はない。
- 他の可能性:国際犯罪集団が金銭目的で低流動性株を悪用している可能性。
- 影響の限定:被害は個人投資家に限定されており、経済全体への影響はまだ小さい。
憶測は興味深いものの、証拠がない以上、投資家は金融庁や証券会社の公式情報に基づく判断を優先すべきです。
今後のリスクと備え
攻撃が続く場合、以下のリスクが懸念されます:
- 攻撃の拡大:ネットバンキングや他の金融機関への波及。一部銀行で類似の報告あり。
- 市場への不信:投資意欲の低下が経済に影響。
- システム改善の必要:証券会社は2FAの義務化やAIによる不正検知の強化を進めるべき。
投資家は、金融庁の発表や証券会社のサポートを注視し、セキュリティ対策を徹底してください。
結論:自衛で資産を守る
日本のネット証券を襲う不正アクセスは、投資家の資産と市場の信頼を脅かしています。補償がない以上、二段階認証、強力なパスワード、フィッシング対策、取引監視で自衛することが不可欠です。中国関与の可能性は議論されていますが、証拠がないため、過度な憶測は避けましょう。金融庁の情報や証券会社のサポートを活用し、資産を守りつつ、デジタル金融のリスクに備えましょう。
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