グロース株での痛い経験と方針転換
2023年、私はグロース市場の仕手株であるAbalanceに手を出し、一時は大きな含み損を抱えました。幸いにもタイミング良く損切りできたため致命傷は避けられましたが、この経験から「今後はもっと堅実で信頼できる企業に投資しよう」と決意しました。
成長性よりも財務基盤や安定性を重視する方針に切り替えるきっかけとなりました。短期間での大きな利益よりも、長期的に安定して資産を増やすことの重要性を強く意識するようになりました。
有名企業への投資で得た一時的な成功
その後はマクニカ、ソシオネクスト、オリンパス、日本通運など、東証プライム上場かつ日経225採用銘柄を中心に売買し、短期間で100万円以上の利益を上げました。このときは、「やはり有名企業は安心だ」という思い込みが、自分の投資判断の前提条件として固まってしまっていました。知名度の高さや安定感のある業績が、あたかも将来も変わらず続くかのように錯覚させていたのです。今振り返れば、この慢心こそが次の大きな落とし穴の入口でした。
世界ブランド・ヤマハ株への投資開始
次に目をつけたのは、楽器や音響機器で世界的に知られるヤマハ(Yamaha)の株でした。最初は4,500円で100株を購入。株価はやや下落傾向でしたが、チャートを見る限りでは底を打ったように見えたため、下がるたびにナンピン買いを重ね、最終的には合計700株という大型のポジションになりました。購入当時は「世界ブランドの株を大量に持っている」という心理的な満足感もあり、ポートフォリオ全体に占める比率が高まっていることへの危機感は薄れていました。
楽観的な見通しと現実の乖離
「世界のヤマハ」というブランド力に加え、投資掲示板でも好意的な書き込みが多かったため、「多少下がっても時間が経てば戻るだろう」と安易に考えていました。しかし現実は厳しいものでした。業績は想定より伸びず、下方修正が相次ぎ、含み損は日々拡大していきました。値動きのたびに「今度こそ反発するはず」と思い込み、結果的に売り時を逃す心理的な罠にはまり込んでしまったのです。
株主優待の突然廃止と経営陣への不信感
決定打となったのは、株主優待制度の突然の廃止でした。通常、優待の変更や廃止は数か月前に告知し、株主の混乱を避けるものです。しかしYamahaは事前通知なしに発表しました。株価への悪影響が予想される中、十分な説明もなく進めたため、「株主を軽視しているのではないか」という強い不信感を抱きました。この発表をきっかけに、「ブランド力と株主への誠意は別物なのだ」という意識が強く芽生えたのです。
楽器産業の厳しい見通し
調べていくと、中国市場での販売不振、世界的な景気後退、少子化や音楽教育の縮小など、楽器業界全体の構造的逆風が浮き彫りになりました。電子楽器の低価格化や中古市場の拡大もあり、新品需要は今後さらに減少する可能性が高い。こうした要因を総合的に考えると、長期的に株価が買値まで回復する見込みは極めて薄いと判断せざるを得ませんでした。
約120万円の損失と投資方針の転換
こうして私は、約120万円の損失を覚悟のうえで全株を損切りしました。この経験から学んだのは、「日経225採用の大企業でも株価が半値以下になることはあり得るし、そのまま戻らないこともある」という現実です。ブランドや知名度に過信すると、冷静な判断を欠き損失を拡大させる危険があると痛感しました。
分散投資へのシフトと後味の悪さ
この失敗を機に、私は個別株への集中投資をやめ、投資信託を使った分散投資へ移行しました。投資は自己責任ですが、今でもYamahaのロゴや楽器店を目にすると、当時の苦い記憶がよみがえります。ちなみに、株主優待でもらったカレーやふりかけは評判ほど美味しいとは感じられず、優待内容に過度な期待を寄せることも、冷静な投資判断を鈍らせる要因だと改めて思いました。結果として、損失は金額以上に精神的なダメージとして残り、今後の投資スタイルに大きな影響を与える教訓となったのです。




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