【個別株の失敗経験①】恐怖の仕手株:Abalanceで味わった地獄の一カ月

個別株

かつて私は、個別株を購入して運用していましたが、ある二つの出来事をきっかけに、次第に個別株への投資から距離を置くようになりました。その転機のひとつが、いわゆる「仕手株」との遭遇です。今回は、私の投資人生に深い影響を与えた銘柄、「Abalance(エーバランス)」での苦い経験を振り返ってみたいと思います。

掲示板の熱狂と高値掴み

当時の私は堅実に優待株を買い集めていましたが、2023年のある日、ヤフーファイナンスの掲示板でAbalanceという銘柄が連日話題になっているのを目にしました。株価は急騰しており、書き込みには「第二のユニクロになる」「今買わなければ一生後悔する」といった強気のコメントが溢れていました。

最初は疑いの目で見ていたものの、日を追うごとに高まる熱気と株価の上昇に心が揺れ動き、ついに購入を決断。最初は11,000円台で100株だけ購入したつもりが、気づけば勢いに乗せられ700株、約770万円分を保有してしまっていました。

増し担保規制と大暴落

購入直後は一時的に株価が13,000円台まで上昇し、含み益も80万円近くになりました。順調に見えましたが、突然、証券取引所から信用取引に対する「増し担保規制(増担)」が発表され、状況は一変します。株価は暴落し、数日のうちに7,000円台まで急落。私の保有株も一気に300万円近い含み損に転じました。

この時の精神的ダメージは今でも忘れられません。日中は吐き気と眩暈に悩まされ、夜も眠れず、食欲すら失いました。「ここで損切りすれば楽になれる」と思いながらも、「こんな大金を手放したくない」との思いで、毎日が葛藤の連続でした。

奇跡的な回復と決断

そんな苦しい日々が約1カ月続いたある日、株価が反転して上昇を始めます。含み損は徐々に減り、やがて買値付近まで回復。私は「もう一度あの地獄に戻るのは耐えられない」と判断し、買値近くで全株を売却しました。結果的に損失は出さずに済みましたが、もし少しでもタイミングを誤っていれば、大損をしていたことは間違いありません。

仕手株疑惑とその後

売却からしばらくして、Abalanceに「仕手株疑惑」が浮上します。掲示板では「これは機関投資家の仕掛けだ」「ただの風説だ」といった応酬がありましたが、その後株価は下落の一途をたどり、最終的には500円台にまで下落しました。もし私が保有を続けていれば、770万円はわずか35万円程度にまで目減りしていた計算です。

株価の下落中、掲示板には「子どもの学費が消えた」「退職金を失った」といった悲痛な投稿も相次ぎ、多くの個人投資家が市場から姿を消していきました。

IR担当者の逮捕とその意味

さらに2024年6月、Abalanceの元執行役員でIR(投資家向け広報)を担当していた人物が、インサイダー取引の疑いで証券取引等監視委員会から告発されました。問題となったのは、Abalanceの子会社が太陽光パネル関連の設備(固定資産)を取得するという重要な決定を知ったうえで、その情報が公表される前に自社株(Abalance株)を約5,300万円分購入していたという行為です。これは金融商品取引法に違反する「相場操縦的行為」とされ、のちに有罪判決が下されました。また、株価急騰や掲示板での異常な盛り上がりが、自然な投資需要ではなく人為的な仕掛けであった可能性を強く示唆しています。

この経験から得た教訓

この一件を通じて私は、個別株、特にグロース市場や出来高の少ない仕手性の高い銘柄への投資には、想像を超えるリスクがあると痛感しました。今回は運良く致命的な損失を避けることができましたが、それはあくまで「運」にすぎません。

株式投資では「勝つこと」以上に「負けないこと」が重要です。華々しい成功談の裏には、数え切れない失敗と後悔があることを、身をもって学んだ出来事でした。

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