現在、私はほぼ無職に近い状態で、年間の所得は15万円ほどです。そんな暮らしですので、安定した「現金収入」が得られる投資商品に自然と目が行きます。
そんなとき目に留まったのが、「インベスコ世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(愛称:世界のベスト)」という毎月分配型の投資信託でした。
世界のベストは、先進国の株式に投資するファンドです。インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が運用し、「成長」「配当」「割安」の3つの観点から、独自のバリュー・アプローチでグローバル比較で割安と判断される銘柄を厳選して投資しています。
毎月1.7万円がもらえる!? 配当生活の夢
この投資信託は、毎月1万口あたり150円の分配金を出しています。2025年6月5日時点の基準価額は8,664円。単純計算で、100万円を投資すると約115,433口を保有でき、毎月の分配金は約17,315円(税引前)になります。
税引後でも約15,571円が手元に残る計算です。今の自分にとって、この金額はかなり大きい。電気・水道・通信などの費用をまかなえてしまいます。
「これが毎月入ってくるなら、少し安心して暮らせるのでは…?」
そう思った私は、この商品を本気で検討し始めました。
しかし、調べるうちに見えてきた現実
ところが、少し踏み込んで調べてみると、分配金には2種類あることがわかりました。
- 普通分配金:運用益から出される。税金がかかる。
- 特別分配金:元本の払い戻し。非課税だが、資産が減る。
ファンドの直近の運用報告書を見てみると、2025年4月の分配金はすべて「特別分配金」でした。つまり、「運用で利益が出たから配当している」のではなく、「自分のお金を取り崩して返してくれている」だけなのです。
この事実を知った瞬間、「毎月の分配金」という言葉の響きの裏にあるリスクが、現実味を帯びてきました。
元本は確実に目減りする仕組みだった
さらに驚いたのが、長期保有した場合の元本の減少です。
試算では、100万円を投資して5年間保有した場合:
- 元本は約74万円まで減少
- 5年間で受け取れる分配金は約92.4万円(税引後)
- 合計資産は166.4万円に
一見すると「儲かっている」ように見えますが、よく考えるとそうではありません。分配金の半分は自分の元本を削っているので、お金が戻ってきているだけです。
しかも、「世界のベスト」のようなアクティブファンドは手数料も高めです。信託報酬は年1.903%、さらに売却時には0.3%の信託財産留保額もかかります。長期保有すればするほど、コストの影響が重くのしかかります。
一方、オルカンという選択肢
そこで比較対象にしたのが、「eMAXIS Slim 全世界株式(通称:オルカン)」です。こちらは分配金を出さず、利益をそのまま再投資していくタイプのファンドです。
- 信託報酬はわずか0.05775%
- 全世界に分散投資
- 長期的に複利効果を最大化できる
仮にオルカンに100万円投資して5年間保有した場合、年平均利回りが8~10%なら、5年後には147~161万円になると試算されています。分配金こそありませんが、元本が着実に増えていく安心感があります。 現在のところ、「世界のベスト」のリターンはオルカンを上回っていますが、オルカンよりも高いコストとリスクを伴っているため、長期投資には適していません。
結論:私は「世界のベスト」を買わない
月に1万5,000円の分配金は当時の私にとって魅力的でした。ですが、分配金が時に元本を削って得ているものだと分かった時点で、購入する気にはなれませんでした。
投資は目的に応じて選ぶべきです。目先の収入を重視するか、長期的な資産拡大を優先するか、状況や目標によって最適な商品は異なります。分配金の仕組みに惹かれる方も、その中身をよく調べてください。運用益から来ている部分があるとしても、どの程度が自分の資金の返還なのか、確認することが大切です。誤解から安易に飛びついてしまう人の、冷静な判断の一助になれば幸いです。
免責事項:本記事は特定の商品の購入を推奨または非推奨とするものではなく、筆者の個人的な経験と考察に基づいています。投資は個々の目的や状況により最適な選択が異なりますので、ご自身の責任で慎重に判断してください。購入前には、最新の目論見書や運用報告書を必ずご確認ください。
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