『上位10社に乗れば勝てる』は本当か? 私がSP10に投資しない理由

投資信託

2024年のハイテク株ブームの最中、多くの投資信託が誕生しました。その一つが「Tracers S&P500トップ10インデックス(以下、SP10)」です。S&P500の上位銘柄に集中投資できる手軽さと、年率0.10725%という圧倒的な低コストは、一見すると非常に魅力的に映ります。そこで販売開始を機に、試しに少額を購入してみました。

結果として、私は短期間で売却し、この投資信託を自分のポートフォリオに加えないことにしました。その理由はシンプルです。時価総額加重平均型という手法は、10銘柄という限られた構成数ではかえって特定銘柄への依存度が高まり、リスクが集中しやすくなるという弱点があるからです。

出典:日興アセットマネジメント

時価総額加重が機能するのは「分母が大きい」ときだけ

SP10のコンセプトは、米国株の時価総額上位10社に集中投資するというものです。これだけ聞くと「今をときめく最強銘柄に絞った効率的な投資」と感じるかもしれません。しかしながら、問題はこの10という銘柄の少なさにあります。

本来、時価総額加重平均は、100〜500銘柄といった十分な数の銘柄で分散効果を発揮する仕組みです。ところが10銘柄ではその恩恵はごく限られたものになり、むしろリスクが集中します。実際、2024年6月時点で、マイクロソフト、アップル、エヌビディアの3社だけでポートフォリオの過半を占めており、少数銘柄への依存度が極端です。

このような構造では、どれか1社に悪材料が出ただけでファンド全体が沈むリスクを常に抱えることになります。

成長を捉える力のなさ=「勝ち組の後追い」

SP10の構成銘柄は、いずれもすでに巨大化した企業ばかりです。確かにこれまで素晴らしい成長を遂げてきた企業群ですが、今後も過去と同じペースで成長できる保証はありません。

一方で、FANG+や他の均等加重ファンドは、成長途中にある企業にも等しくリスクを取りに行く設計です。リターンデータを見ても、SP10は年率16.89%と、FANG+の38.40%に大きく水をあけられています。これは単なるテーマや銘柄選定の違いではなく、運用設計の原理的な差だと私は考えます。

SP10は「強い銘柄をより強くする構造」ですが、私が重視するのは「次に伸びる銘柄を拾える構造」です。そこが決定的に違います。

コアとしてもサテライトとしても中途半端

私のポートフォリオは、「戦略型ファンドでの成長性追求」をコアに据えています。そうした方針の中で見たとき、SP10はコアになり得ないと感じました。

また、サテライト投資として見ても投資テーマが曖昧です。AI特化型でもなく、クラウドや半導体といった明確なセクターに焦点を当てているわけでもない。強いて言えば、「S&P500の上位10銘柄に投資する」という一点だけが特徴です。

Zテックと比較して

以前の記事で、Zテック20というファンドについても「買わない」と判断した理由をまとめました。Zテックは20銘柄に分散されており、一見するとSP10よりもリスク分散が効いているように見えます。しかし、実際には下位銘柄の構成比率が極端に小さいため、実質的には少数の上位銘柄に集中しており、SP10以上に偏りが大きいという問題を抱えています。

両ファンドに共通しているのは、「成長性を活かしきれない」構造になっている点です。

Zテックには「グローバル・テクノロジー株」という明確なテーマがあります。このテーマ性という観点では、むしろSP10よりも明瞭で魅力的に見えるかもしれません。しかしながら、Zテックも時価総額加重型の運用を採用しており、その結果、成長の初期段階にある新興のAI企業など、将来性のある銘柄の影響力がファンド全体に及びにくいという課題があります。

結論:時価総額加重は、万能ではない

インデックス投資の王道とも言える「時価総額加重平均型」ですが、それが機能するには前提条件として十分な銘柄数と分散性が必要です。SP10のように銘柄数を絞ってしまうと、その前提が崩れ、手法自体が裏目に出てしまう。そこに気づかずに「低コスト」だけで飛びつくのは、私にはできませんでした。

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