レバレッジFANG+の落とし穴:長期投資に不向きな理由

投資信託

iFreeレバレッジFANG+は、NYSE FANG+指数の2倍の値動きを目指す投資信託です。テック業界のスター企業にレバレッジをかけて投資できる魅力的な商品ですが、高いコストとリスクが潜んでいます。

特に、信託報酬の高さ、為替ヘッジコスト、そして長期低迷時の逓減リスクが運用成績を圧迫するため、リスクを承知した短期的な利益狙い以外ではおすすめできません。この記事では、レバレッジFANG+の落とし穴をわかりやすく解説し、長期投資家向けに非ヘッジ型FANG+の優位性を提案します。

1. 高い信託報酬:1.275%の確実な負担

レバレッジFANG+の信託報酬は年率1.275%で、インデックスファンドとしてはかりの高額です。具体的には、100万円を投資すると、年間12,750円が運用成果に関係なく差し引かれます。

信託報酬は年率を営業日ごとに計算して、基準価額の更新時に差し引かれるため、横ばい状態や下落局面では、投資家の資産が徐々に減少することを意味します。コストは投資における「確実な負担」であり、この高い手数料が長期投資のパフォーマンスを低下させる要因となり得ます。

2. 隠れた落とし穴:為替ヘッジコストについて

レバレッジFANG+は為替ヘッジ付きの商品です。為替ヘッジは、円とドルの為替変動の影響を抑える仕組みですが、その代償として「ヘッジコスト」が発生します。驚くべきことに、このコストは目論見書や証券会社のウェブサイトに明確に書かれていないため、知らずに購入してしまう人が後を絶ちません。ここでは、為替ヘッジコストを誰でも理解できるように、シンプルかつ具体的に解説します。

為替ヘッジコストとは?

為替ヘッジをイメージするなら、ドル資産を円の価値変動から守るための「保険」と考えるとわかりやすいです。この保険料がヘッジコストで、その金額は日本と米国の金利差で決まります。2025年6月時点で、日本の政策金利は約0.50%、米国の金利は約4.50%です。この差(4.50% – 0.50% = 4.0%)がヘッジコストのベースになります。

例えるなら、米国の資産(ドル資産)を持つために、日本円を米ドルに交換し、その為替リスクをヘッジするようなものです。米国の金利が日本より高い分、その金利差(ヘッジコスト)を負担する必要があります。さらに、為替市場の需給状況によっては「ベーシスコスト」という追加料金が発生する場合もあります。ここでは簡潔に、年間ヘッジコストを4.0%と仮定して話を進めます。

為替ヘッジコストの実感できる影響

2025年6月7日時点のレバレッジFANG+の基準価額は30,803円です。この投資商品には、為替変動の影響を抑えるためのヘッジコスト(年間4.0%)がかかります。このコストがあなたの資産にどう影響するのか、具体的に見てみましょう。

たとえば、100万円を投資した場合を考えてみます:

  • 年間ヘッジコスト:投資額100万円 × 4.0% = 約40,000円
  • 1営業日あたりのコスト(営業日250日として):40,000円 ÷ 250 = 約160円

つまり、100万円を投資すると、市場が動かなくても年間約40,000円、1営業日あたり約160円がヘッジコストとして差し引かれます。市場が下落すれば、レバレッジの特性上、損失がさらに大きくなり、このコストがより重く感じられるでしょう。「そんなコストがあるなんて知らなかった」では済まされない、隠れた負担なのです。

3. 長期投資の敵:コストの雪だるま効果

レバレッジFANG+は、2倍の値動きを狙う設計上、短期的な市場上昇では大きな利益を生む可能性があります。しかしながら、長期投資では信託報酬(1.275%)とヘッジコスト(4.0%)の合計5.275%が雪だるま式に資産を削ります。この「コストの積み重ね」を軽視すると、将来の資産形成に大きな差が生じます。

5年・10年後のコストをイメージ

初期投資100万円に対し、年間コスト5.275%が毎年資産から差し引かれると仮定し、5年および10年後のコストを試算します(市場変動は除外し、コストのみ考慮)。毎年コストが引かれることで、資産が徐々に目減りしていくイメージです。

  • 5年後のコスト
    • 毎年5.275%ずつ減るとして、5年間で約263,750円(投資額の約23.8%)がコストとして失われます。
  • 10年後のコスト
    • 10年間で約527,500円(投資額の約52.8%)がコストで消滅。

日米の金利差が縮小しなかった場合、5年で約26万円、10年で約53万円がコストで消える計算です。100万円の投資が10年後には半分近くをコストで失う可能性があります。下落局面ではレバレッジ効果で損失がさらに拡大し、コストの負担感は増大します。長期投資家にとって、この累積コストは見逃せないリスクです。

4. レバレッジの罠:長期低迷時の逓減リスク

レバレッジFANG+の最大のリスクの一つは、長期にわたる市場低迷時の「逓減効果」です。レバレッジ商品は日々の値動きを2倍に増幅するため、市場が上下に変動する中で資産が急速に目減りする可能性があります。特に、市場が長期間低迷したり、ボラティリティが高い状況では、レバレッジの特性が裏目に出て、投資元本が大きく減少するリスクがあります。

逓減効果の仕組み

レバレッジ2倍の場合、基準価額は指数の1日の値動きの2倍で変動します。たとえば、基準価額が10,000円で、指数が1日目に5%下落、2日目に5%上昇した場合、非レバレッジ商品なら元の水準に戻りますが、レバレッジ商品では以下のように計算されます:

  • 1日目(5%下落):10,000円 × (1 – 5% × 2) = 9,000円
  • 2日目(5%上昇):9,000円 × (1 + 5% × 2) = 9,900円

結果、基準価額は10,000円から9,900円に減少し、100円の損失が発生します。このように、市場が変動してもレバレッジ商品は元本が減少し続ける「逓減効果」が働きます。長期低迷や高ボラティリティ環境では、この効果が積み重なり、資産が予想以上に減少するリスクが高まります。

低迷シナリオでの試算

市場が毎年5%下落する低迷シナリオを仮定し、100万円投資の資産価値を最大5年で試算します。レバレッジFANG+(2倍)とiFreeNEXT FANG+(非レバレッジ)を比較し、信託報酬とヘッジコストも考慮します。

レバレッジFANG+では、市場の5%下落が2倍の10%下落となり、さらにコスト5.275%が加わるため、毎年約15.275%ずつ資産が減少します。iFreeNEXT FANG+では、5%下落にコスト0.7755%が加わり、毎年約5.7755%減ります。

この結果、5年後の資産価値は以下の通りです:

  • レバレッジFANG+は約43.8万円に減少し、元本から約56.2%の減少
  • iFreeNEXT FANG+は約74.5万円に減少し、元本から約25.5%の減少

低迷が続くほど、レバレッジの逓減効果と高コストが資産を急速に侵食します。特にレバレッジ型商品では、長期保有時の複利的な価値減少リスクが顕著になります。

5. 賢い選択:非ヘッジ型FANG+の魅力

レバレッジ型のFANG+ファンドは、市場が下落した際に損失が大きくなるだけでなく、総合的なコストも高くなる傾向があります。こうしたリスクを回避したい場合は、同じFANG+指数に連動する非レバレッジ・非為替ヘッジ型の「iFreeNEXT FANG+インデックス」が有力な選択肢となります。

このファンドは為替ヘッジを行っておらず、信託報酬は年0.7755%と、レバレッジFANG+の総合コスト(信託報酬1.275%+為替ヘッジコスト約4.0%、合計5.275%)と比較して、非常に低く抑えられています。

為替変動による影響は避けられませんが、長期的に円安が進行すれば、為替差益によってリターンが押し上げられる可能性もあります。テクノロジー企業の成長を長期的に取り込みたい投資家にとって、低コストで運用できる点は大きな魅力と言えるでしょう。

リターンとコストの比較表(2025年6月時点の仮定)

項目レバレッジFANG+FANG+インデックス
信託報酬年1.275%年0.7755%
為替ヘッジコスト年4.0%程度なし
5年平均リターン (年率、税引前・コスト控除後)約15%約12%
10年平均リターン(年率、同上)約10%約11%
リスク(年率変動率)約50%約25%
為替リスク低(ヘッジあり)高(ヘッジなし)

注記:

  • 上記のリターンは仮定に基づくものであり、将来の運用成果を保証するものではありません。
  • レバレッジFANG+は、短期的には高いリターンが期待できる一方で、コストや価格変動の大きさが長期の運用成績に与える影響は無視できません。
  • 一方、FANG+インデックスはコストを抑えつつFANG+指数の動きに連動するため、長期的な資産形成を目指す投資家には適した商品といえます。

6. 結論:短期トレード以外は非ヘッジ型を

レバレッジFANG+は、リスクを十分に理解したうえで、短期的な市場上昇の波に乗りたい投資家にとっては、魅力的な選択肢となり得ます。しかし、信託報酬1.275%に加え、為替ヘッジによるコストが年間約4.0%発生するため、実質的な総コストは年5.275%と非常に高く、これが長期的なリターンを大きく圧迫する要因となります。

さらに、市場が下落する局面では、日々の値動きの積み重ねによる逓減効果が働き、資産価値が急速に減少するリスクも無視できません。特に、為替ヘッジコストは目に見えづらく、商品説明などでも明示されない場合があるため、初心者にとっては見落としがちな重大なリスク要因です。

例えば、市場が毎年5%ずつ下落する低迷シナリオを想定すると、100万円を投資した場合、5年後の資産価値は約43.8万円にまで減少する可能性があります。これは高コストと逓減効果が複合的に資産を削っていく結果であり、短期売買に適した商品である一方で、長期保有には不向きであることを示しています。

FANG+指数の成長力を活かすなら、iFreeNEXT FANG+インデックスの選択をお勧めします。信託報酬は0.7755%でヘッジコストがゼロであるため、長期的な資産成長が期待できます。

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